遺産分割がまとまらないときは?
遺産分割協議が長引いて、相続人同士ではどうしても話がまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することができます。裁判所で第三者を交えて話し合うことで、冷静に遺産分割の方法を決められることもあります。
遺産分割調停
調停を利用する場合は、相続人の1人または複数人が申立人、そのほかの相続人が相手方となり、相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所で申し立てます。申し立ての際は、申立書のほか、被相続人と相続人全員の戸籍謄本などの必要書類を提出し、収入印紙1200円分と、連絡用の郵便切手代がかかります。
調停は平日の2時間程度、1~2か月に1度のペースで行われます。当事者同士は会わず、申立人と相手方が交互に出廷し、調停室で裁判官と調停委員2人を交えて話し合います。調停に必要な資料は、主張した側が集めて裁判所に提出する必要があります。調停委員は双方の主張を聞き、中立的立場で合意を目指してくれます。弁護士を付ける必要はありませんが、弁護士がいれば法的な助言をもらえ、代理人として調停に出席してもらうこともできます。
最終的に裁判官と調停委員が提案する遺産分割の方法に対し、1人でも反対する人がいれば調停は成立せず、全員の合意によって調停が成立します。成立後は調停証書が作成されるので、これで預貯金の払い出しや不動産の名義変更などの手続きができます。
遺産分割審判
調停が成立しない場合は、自動的に遺産分割審判に進み、審判では裁判所が判断して結論を伝えます。審判に不満があれば、審判が下った翌日から2週間以内に不服申し立て(即時抗告)を行う必要があり、2週間を過ぎると審判が確定します。
時間や労力をかけて調停や審判を行っても、最終的には法定相続分で分けることも多いという話もあります。必ずしも自分に有利な結果になるとは限らないため、家庭裁判所の調停や審判に進まずに済むように、相続人同士で冷静に分割方法を決めたいものです。
遺産分割が遅くなった場合
遺産分割の話し合いを先送りにして、何もしてしなかった場合、遺産分割をしていない財産は、すべて相続人の共有状態となり、預金の払い戻しや不動産の名義変更なども、全員の合意がなければできなくなります。
相続税がかかる場合、申告期限までに遺産分割協議がまとまらないと、法定相続分で分割したものとして相続税の申告・納付を行わなければならず、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などが利用できなくなります。その結果、予想以上の税負担になることもあり、それを各相続人が自己負担で納めなければなりません。その後、一定の期限までに遺産分割がまとまれば、再度申告して、納めすぎた税額があれば更正の請求で払い戻しを受けることもできますが、申告だけでも2度手間になります。
不動産の場合、相続人が決まらないと所有権の移転登記もできず、所有者が被相続人になっている状態では、売却や活用も難しくなります。それでいて、固定資産税などの負担は相続人全員で負担することになり、管理の手間とコストもかかります。さらに借金や保証人といったマイナスの財産がある場合は、原則としてそれも相続人全員で共有し、返済の義務を負うなどのリスクがあることを知っておきましょう。
遺産分割が決まらないうちに、相続人の1人が亡くなると、その人の相続人たちがまた、相続人に加わるため、遺産分割協議はさらに複雑になり、面倒な手続きも増えてしまいます。遺産分割協議はできるだけ早く、すみやかに進めることが大事です。