不動産の管理義務とは
相続人には相続財産に対する管理義務があり、管理義務は相続放棄をしても直ちには消滅しません。そして、不要な家屋や土地、農地、山林といった相続財産があるケースで相続放棄をするときは特に注意が必要になります。相続放棄をしたとしても、これらの財産は管理責任を追及される場合があります。
例えば、地震等の災害により、相続財産である瑕疵ある家屋が倒壊して周囲の家屋に損害が生じた場合には、管理義務を負う方(=相続放棄をした方)が、損害の賠償責任を負わなければならないおそれがあります。このような責任の根拠となるのが管理義務です。
この記事では、家・農地の相続放棄に伴う管理義務について、詳しくご説明いたします。
相続放棄をしても管理義務が残る
相続放棄をしても、相続財産から発生する問題の責任を負わずに済むようになるとは限りません。 相続放棄をした人は、優先度の高い相続人や相続財産管理人が相続財産の管理を始められるようになるまでは「管理義務」を負わなければならないと法律で定められています。
管理義務とは、自分の財産に対するのと同程度の注意を払って財産の管理を続ける義務をいいます。 例えば、相続財産に家が含まれる場合に相続放棄をしたとしても、新たに相続人となった人が家の管理を始められるようになるまでは、家の管理を続けなければなりません。 具体的には、外壁や屋根の簡単な修繕を行う、庭木を手入れする、害虫や小動物が住み着かないようにするといった、近隣の住民に迷惑をかけない程度に管理することが求められます。 万が一、家の管理義務を怠っていると、下記のようなトラブルが発生してしまう可能性があります。
- 建物の倒壊
- 火災による延焼
- 不審者による不法占拠
- ゴミの不法投棄
- 悪臭の発生
- 虫や動物の繁殖
こうしたトラブルによって損害を受けた近隣住民から損害賠償請求されてしまうリスクがあります。 相続人には、家だけではなく相続財産全般に対して管理義務が発生します。
相続財産管理人とは
相続財産管理人とは、相続人が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれます。)被相続人の債権者等に対して被相続人の借金等を支払うなどして清算を行い,清算後に残った財産を国庫に帰属させる人です。
利害関係人に公平にするため、家庭裁判所が地域の弁護士が選任することが通例です。
相続財産管理人が選任されている場合、相続財産管理人が家や土地などを競売にかけるなどして金銭に換え、債権者や特別縁故者などに分配してくれます。