農地を相続放棄したい場合の注意点
「自分は他の仕事に就いているので、不要な農地を手放したい」「相続税を全額は支払えないので、農地だけ相続放棄をしたい」「どうにかして農地を手放す方法はないの?」など、農地を相続するにあたり、様々な思いや疑問を抱かれていらっしゃるかと思います。 この記事では、農地の相続と相続放棄について詳しくご説明いたします。
不要な農地だけ相続放棄をすることはできない
相続放棄とは、相続財産に関する一切の権利義務を放棄することをいい、すべての相続財産に関する相続の権利を手放すことになります。 したがって、都合の良い財産だけを選んで相続することはできません。
相続放棄はできても所有権は放棄できない
所有権とは物を自由に使用・収益・処分することのできる権利ですが、民法では、土地をはじめとした不動産の所有権の放棄を認めていません。相続放棄ではすべての相続財産に関する権利を放棄しなければならないことに加え、不動産の所有権の放棄は認められないので、農地の所有権だけを放棄することはできないのです。
相続放棄をしても農地の管理義務は残る
「管理義務」とは、自分の財産におけるのと同一の注意をもって相続財産の管理をしなければならない義務をいいます。 相続放棄をしても、新たな相続人が相続財産の管理を始めることができるようになるまでは、継続して管理義務を負うことになります。
放置すると「耕作放棄地」となり、さらに処分が難しくなる
農地の処分には手間がかかり、すぐに処分できないからといって放置すると「耕作放棄地」となり、さらに処分が難しくなってしまいます。
耕作放棄地とは、現在耕作が行われていないことに加え、近いうちに耕作の予定もない、放置されている農地のことをいいます。
誰の手も加えられないので、耕作放棄地では、雑草や害虫の発生、廃棄物の不法投棄、野生動物の繁殖等の問題が発生してしまいます。
また、耕作放棄地となると、農地が持つ様々な有用性が失われてしまい、様々な問題が発生した土地になってしまっては、売却するとなっても買い手がつかず、寄付も断られ、国庫帰属も拒否されて、結局処分することができなくなってしまいます。