土地の相続などの際に所有者についての登記が行われないなどの理由で、誰が所有者なのか分からない土地が増えています。所有者が不明の土地の面積は、国土の約22%に上り、管理されずに放置された所有者不明の土地は、周辺の環境や治安の悪化を招いたり、防災対策や開発などの妨げになったりしています。
所有者不明土地とは
所有者不明土地とは、相続等の際に土地の所有者についての登記が行われないなどの理由により、不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地、または所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない土地のことです。
このような土地が日本各地で増加しており、その面積を合わせると、九州よりも広く、国土の約22%(平成29年度国土交通省調べ)にも及んでいます。今後、所有者不明土地は、さらに増えていくと予想されており、各地で社会問題になっています。
所有者不明土地が生じる主な原因としては、
- 土地の相続の際に登記の名義変更が行われないこと
- 所有者が転居したときに住所変更の登記が行われないこと
などがあげられます。
例えば、長期間、相続登記をしないまま放置しておくことにより、土地の相続に関係する者が増えていき、所有者を特定したり、土地を処分したりすることが極めて困難になってしまうのです。
所有者不明土地の問題点
所有者が分からない状態が続くと、土地の管理がきちんと行われないまま放置され、周辺の環境や治安の悪化を招き、近隣住民に不安を与えることになります。
また、土砂崩れなどの防災対策のための工事が必要な場所であっても、所有者が分からないために、工事を進めることができず、危険な状態が続いてしまったり、公共事業や市街地開発などのための用地買い取り交渉ができず、土地の有効活用の妨げになったりします。
所有者不明土地の解消方法
所有者不明土地の問題を解消するため、令和3年4月に「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立・公布されました。
この2つの法律では、所有者不明土地の発生を予防したり、すでに発生している所有者不明土地を滞りなく利用したりするために、次のような見直しと制度の創設が行われました。
登記が適切に行われるようにするための不動産登記制度の見直し
相続等により取得した土地を手放すための制度(相続土地国庫帰属制度)の創設
土地利用に関連する民法ルールの見直し