荒廃農地とは、「現に耕作されておらず、耕作を放棄したことにより荒廃し、客観的に見て通常の農作業では作物の栽培が不可能となっている農地」のことで、荒廃農地調査(農林水産省「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」)で定義された用語です。荒廃農地は毎年の現地調査によって把握されます。発⽣原因としては、「⾼齢化、労働⼒不⾜」、「⼟地を持つ⾮農家の増加」、「農作物の価格低迷」、「収益の上がる作物がないこと」などが挙げられています。
荒廃農地は2つに区分される
荒廃農地は下記の2つに区分されます。
再生利用が可能な荒廃農地
根を抜き撤去したり、整地や区画整理を行ったり、外部から土を搬入したりして土地を再生することにより、通常の農作業で耕作ができるようになる見込みのあるもの。
再生利用が困難と見込まれる荒廃農地
森林のようになってしまっているなど、農地に復元するための物理的な条件や整備が著しく困難なもの、または周囲の状況から見て、その土地を農地として復元しても継続して利用することができないと見込まれるもの。
2016年の荒廃農地面積は全国で約28.1万ヘクタール。このうち、「再生利用が可能な荒廃農地」は約9.8万ヘクタール、「再生利用が困難と見込まれる荒廃農地」は約18.3万ヘクタールとなっています
荒廃農地の問題
荒廃農地は誰も耕作を行っていないため、管理が行き届いていないことがほとんどです。そのため、その農地は時間とともに荒廃します。
そして、荒れ果てた土地では、人の目も届きにくいことからゴミや廃棄物を不法投棄されやすくなります。
不法投棄された耕作放棄地は、荒れて景観を損なうだけでなく、再びその農地を利用するときにゴミや廃棄物の処理をするための費用もかかります。
このような状態になると土地の価値が下がりますし、貸し出したり、売ったりできる状態にするにも費用がかかるので、結果、土地を運用しにくくなります。
荒廃農地は農地として利用していないので、農地として評価して課税することは不適切とされ、課税が強化されるという法令が平成29年度から実施されており、農地として使用しているときよりも固定資産税が約1.8倍になります。そして、固定資産税はその農地を保有している限り支払いが続きます。
また農地は耕作を行って管理されている状態だと治水機能や浄化機能を有しているので、台風や大雨などの際の洪水を防いだり水質の浄化をしてくれたりします。
しかし、耕作放棄地だとこれらの機能が損なわれているため、災害時の被害が大きくなる可能性があると言えます。
以上の点から、荒廃農地が増えると、日本の社会にも自然環境にも大きな影響を与える恐れがあります。